抄録
日本のコムギ栽培に関しては,暖冬の影響で出穂期が早まる傾向にあることが報告されているものの,現段階で地球温暖化が収量や品質に影響を及ぼしているかは明らかではない.しかし,今後,地球温暖化が進めば,気象変動が日本のコムギ栽培に及ぼす影響も顕著となる可能性がある.著者らのコムギの作期試験の結果を解析したところ,高温によって,個葉は長くなるが稈が短くなること,1穂小花数が増加すること,千粒重が減少することが示唆された.しかし,高温との関係が不明確な形質が多いため,高温と収量の関係を予測することは困難であった.これらの結果とその他の知見を交えて,日本におけるコムギの地球温暖化対策研究の今後の展開について論じた.