日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
関東地方における飼料用米向け多収水稲品種の乾物生産
石川 哲也
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2012 年 81 巻 3 号 p. 339-342

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抄録
飼料用米としての利用が期待されるべこあおば,夢あおば,モミロマンおよび北陸193号を供試して移植栽培試験を実施し,粗玄米収量や乾物生産をタカナリと比較した.2008年から2010年まで,茨城県つくばみらい市で5月中旬に稚苗を機械移植し,高度化成として7 g m-2,被覆尿素として8.2 g m-2の窒素を,いずれも基肥として施用した.夢あおばとべこあおばの出穂期はタカナリより約10日早く,モミロマンと北陸193号は約4日遅かった.モミロマンの稈長はタカナリより有意に長く,2009年には倒伏が生じた.粗玄米重は各試験年次ともタカナリがもっとも大きく,玄米千粒重が大きいべこあおばも2年続けて800 g m-2を上回った.モミロマンの粗玄米重は,2009年を除いてタカナリより有意に小さかった.出穂期の抜き取り乾物重 (全乾物重) は,生育期間の長い中生品種の方が大きかったが,出穂期から成熟期まで (登熟期間) の個体群成長速度 (CGR) は,早生品種の方がやや高く,2008年と2009年の成熟期全乾物重には有意な品種間差は認められなかった.タカナリと北陸193号は,登熟期間の茎葉乾物重の増減から推定した転流量が大きく,再蓄積は認められなかった.再蓄積が認められたべこあおばや夢あおばは,籾数を増加させれば増収が期待できると判断された.モミロマンは転流・再蓄積量の年次間の変動が大きく,全乾物重の大きさが利点となる稲発酵粗飼料としての利用が適していると推察された.
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© 2012 日本作物学会
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