抄録
肥育期の肉用牛に稲発酵粗飼料を給与する際,飼料中に含まれるβ-カロテンの含量が高いことが問題となっている.そこで,遺伝的にβ-カロテン含量が低い水稲系統を選抜することを目的とし,発酵粗飼料用品種ホシアオバにエチルメタンスルホン酸による突然変異誘発処理を行った後代から,葉色が淡い突然変異系統を選抜し,系統名「多収系1066」を付与した.多収系1066はホシアオバより到穂日数が約一週間長かったが,稈長,穂数,乾物重はホシアオバと有意差がなかった.多収系1066のβ-カロテン含量は,出穂期ではホシアオバの約63%と有意に低かったが,出穂期から黄熟期にかけて多収系1066とホシアオバはともにβ-カロテン含量が低下し,黄熟期における差は明瞭ではなかった.葉緑素計による葉色は,多収系1066とホシアオバともに,出穂期から黄熟期にかけて変化せず,多収系1066がホシアオバに比べて常に低い値を示した.黄熟期収穫を前提とした低β-カロテン品種として,多収系1066をそのまま利用するためにはさらなる改善が必要であるが,多収系1066と既存の発酵粗飼料用品種との交配等の育種的手段により,実用的な低β-カロテン性品種の育成が期待される.