日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
マイクロドウラボによる小麦粉生地物性の少量・簡易評価法
阿部 珠代小宮山 誠一小林 聡西村 努神野 裕信
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2016 年 85 巻 4 号 p. 435-442

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抄録

吸水率(Water absorption)は,小麦粉の加工適性として重要視される項目の一つである.筆者らは,4gの試料で吸水率が計測できるマイクロドウラボで得られた計測値を,標準法であるファリノグラフでの吸水率と比較し,特性評価における実用性を検討した.ビューラーテストミルで製粉した小麦粉(ビューラー粉)について両機器での吸水率を比較した結果,極めて高い正の相関が認められ,マイクロドウラボはファリノグラフに代替して利用できると判断された.さらに,マイクロドウラボでは生地混捏中に加水する‘オートドリップ’機能を利用して,より簡易・迅速な測定が可能である.また,育種選抜での活用を想定し,少量製粉に対応したブラベンダーテストミルの小麦粉(ブラベンダー粉)で吸水率を測定し,ビューラー粉での結果と比較した.その結果,マイクロドウラボによるブラベンダー粉の吸水率は,常法で測定したビューラー粉の吸水率と相関が高く,マイクロドウラボを用いることでブラベンダー粉での吸水率比較が可能と考えられた.一方,秋まきコムギではブラベンダー粉とビューラー粉の吸水率はほぼ一致したが,春まきコムギでは大きな乖離が認められたため,測定値の一致性を重視する場合は留意が必要である.吸水率以外では,安定度,軟化度においてファリノグラフ測定値との間に正の相関が認められた.以上の結果から,マイクロドウラボは少量の小麦粉を使用した吸水率の迅速な測定に有効であり,ブラベンダー粉での生地特性比較にも利用可能である.


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