2017 年 86 巻 4 号 p. 358-366
イネの脱粒性は収穫時においてコンバイン機体内部における脱穀負荷,選別精度を左右することから,作業性能や収穫量に影響を及ぼす.そこで我々は,コンバイン収穫における各種損失や収穫量に対する脱粒性の影響を評価するための実験材料として,ヘテロ型反復自殖法による日本型イネの脱粒性準同質遺伝子系統群を育成しようとした.本稿では,その育成過程を示し,育成系統における主働遺伝子と遺伝的背景の違いが脱粒性程度に及ぼす影響を解析した.脱粒性の異なる日本型品種,「朝日」と「せとこがね」の交雑から育成した11対の派生系統は,ヘテロ型反復自殖法で育成される準同質遺伝子系統群の特徴を概ね具備した.準同質遺伝子系統の脱粒型を易型と難型に大別する要因は主働遺伝子であり,その遺伝子座はqSH1と推定された.準同質遺伝子系統群において,難型系統の脱粒程度はすべて難型親の「せとこがね」と同程度であった.しかし,易型系統の脱粒程度は系統間で異なった.ヘテロ型反復自殖法で育成した準同質遺伝子系統群は同じ両親に由来する派生系統であり,系統対間において互いに遺伝的背景が異なる.これらのことから,「朝日」と「せとこがね」の交雑組合せにおいて,主働遺伝子以外にも,作用力の小さい複数の遺伝子座が脱粒程度に関与していることが示唆された.また,qSH1の機能欠損型対立遺伝子の作用は他の遺伝子座の作用に対して上位性を示した.以上から,本脱粒性準同質遺伝子育成系統は,脱粒性がコンバイン収穫に及ぼす影響評価,日本型イネにおける脱粒性の変異やその発現機構を解明するための実験材料として有用性が高いとみなされた.