日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
山口県の中山間地におけるコムギ・裸麦4品種の収量性からみた播種適期
鎌田 英一郎高橋 肇稲葉 俊二荒木 英樹丹野 研一
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2017 年 86 巻 4 号 p. 375-381

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抄録

山口県では,麦類は瀬戸内の干拓地で栽培されており,中山間地には適さないとされてきた.中山間地は気温が低く,春播性の品種ではしばしば凍霜害が発生し,さらに収穫時期が遅れがちになり,降雨により穂発芽が発生し品質が低下する.しかしながら,秋播性の品種であれば幼穂分化期が遅く凍霜害を回避でき,安定した収量が期待できる.そこで本研究では九州で早播栽培用に育成された秋播性コムギ品種「イワイノダイチ」と長野県の高冷地で育成された秋播性コムギ品種「キヌヒメ」,山口県で奨励されている秋播性裸麦品種「トヨノカゼ」を供試し,これらの収量性を調査することで山口県の中山間地における播種適期について検討した.さらに愛媛県の中山間地で栽培されている春播性の裸麦品種「ユメサキボシ」も同時に比較した.試験は2009/2010年から2014/2015年の6試験年次で行った.子実収量は中山間地ではいずれの品種も10月下旬播きがそれ以前の播種期よりも多く,「キヌヒメ」と「トヨノカゼ」が多かった.平坦地では11月播きが10月下旬播きよりも多かったが,「トヨノカゼ」では10月下旬播きと同じであった.いずれの品種も中山間地の10月下旬播きは,平坦地の11月播きと有意差がなかった.中山間地の10月下旬播きでは,収穫日は「イワイノダイチ」と「キヌヒメ」で6月19日であったのに対して,「トヨノカゼ」は6月8日と早かった.以上より,山口県の中山間地には「トヨノカゼ」のような秋播性の裸麦品種を用いた10月下旬播種が適すると考えられた.

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