「水稲葉枯症」が常発する現地水田において,中干し等の水管理が収量に及ぼす影響について3年間試験を行った.その結果,慣行の水管理では土壌還元が進み,田植え40日後頃より上位葉が「白葉枯病」のように枯れ,坪状に黄褐色から赤褐色に変色する「水稲葉枯症」を発症し,収量が低かった.これに対し,中干し期から登熟中期にかけて2~3回,3~7日落水することで,酸化還元電位が高く推移し,症状が改善し,登熟歩合と収量が高くなった.特に,高温年は,慣行水管理で登熟歩合と収量が劣っており,落水による改善効果が大きかった.更に,このような水稲の還元障害は,養分の欠乏や過剰の障害であることから,稲体の無機成分含量や土壌の理化学的性質などの面から検討し,「水稲葉枯症」の発症要因として,鉄過剰症の可能性が考えられた.