日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
長崎県北部の水稲葉枯症水田における水管理の違いが発症程度と収量に及ぼす影響とその要因
北川 壽市原 泰博原 嘉隆中野 恵子
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2018 年 87 巻 2 号 p. 198-208

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抄録

「水稲葉枯症」が常発する現地水田において,中干し等の水管理が収量に及ぼす影響について3年間試験を行った.その結果,慣行の水管理では土壌還元が進み,田植え40日後頃より上位葉が「白葉枯病」のように枯れ,坪状に黄褐色から赤褐色に変色する「水稲葉枯症」を発症し,収量が低かった.これに対し,中干し期から登熟中期にかけて2~3回,3~7日落水することで,酸化還元電位が高く推移し,症状が改善し,登熟歩合と収量が高くなった.特に,高温年は,慣行水管理で登熟歩合と収量が劣っており,落水による改善効果が大きかった.更に,このような水稲の還元障害は,養分の欠乏や過剰の障害であることから,稲体の無機成分含量や土壌の理化学的性質などの面から検討し,「水稲葉枯症」の発症要因として,鉄過剰症の可能性が考えられた.

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© 2018 日本作物学会
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