業務用向け水稲品種「アケボノ」の安定多収化による生産農家の所得向上を図る上で,目指すべき収量とその到達の目安となる収量構成要素を,岡山県における圃場栽培試験で実際に得られた値から検討した.試験は2016年~2018年の3か年実施し,施肥量を段階的に変えた試験区を設けて倒伏程度,収量,収量構成要素および検査等級を調査した.その結果,登熟期が記録的な寡照条件であった2018年を除き,2016年と2017年の2か年において,倒伏を防ぎつつ反収700 kgに到達した試験区がみられた.また,反収700 kg到達の目安としては,m2当たり籾数33000程度と登熟歩合86%の両立が重要であり,m2当たり籾数が33000程度を超えると,倒伏や検査等級下落の危険性が高まる傾向が認められた.これらのことから,「アケボノ」の安定多収化においては,反収700 kgを目標収量とし,m2当たり籾数33000程度と登熟歩合86%を安定して維持できる栽培技術の確立が必要と考えられた.