日本作物学会紀事
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栽培
水稲の初冬直播き栽培における出芽率に及ぼす種子への薬剤処理と採種年の効果
及川 聡子鈴木 健策西 政佳由比 進松波 麻耶下野 裕之
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2021 年 90 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

寒冷地において,雪解け後の作業制約や春作業の競合がない初冬直播き栽培は,規模拡大やコスト低減を実現する有効な手段の1つである.本研究では,初冬直播き栽培での越冬後の出芽率に与える種子への薬剤処理の効果と採種年の影響を評価した.コーティング資材を含め全26種の薬剤処理の効果を検討した結果,最も効果の高い薬剤はチウラム水和剤(キヒゲンR-2フロアブル.以下,KG)であり,対照(無コーティング,当年産種子,休眠打破なし)での越冬後の出芽率3~9%より17ポイント向上させた.また,前年産と当年産の種子では前年産の出芽率が低下すること,また種子の休眠打破処理によって出芽率が大幅に低下することを明らかにした.すなわち,初冬直播きにおいてKGが有効な種子薬剤であることを見出すとともに,種子休眠の維持が初冬直播き栽培の出芽率の向上に重要であることを示した.

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