プライミング処理は乾燥や低温などのストレス下での種子の発芽・出芽を促進する方法として注目されている.しかし,水稲種子におけるプライミングの報告は少なく,特に北海道の水稲品種の低温環境下での発芽・出芽への効果については不明な点が多い.本研究では,北海道で栽培されている直播向け品種を含む水稲品種を用いて,種子を水に浸漬するハイドロプライミング処理による低温発芽および低温出芽に及ぼす影響について検討した.北海道の直播向け品種「さんさんまる」および「ほしまる」を用いた試験により,25℃18時間の吸水処理を基準となる処理条件とした.このプライミング処理により,多くの供試品種で低温下での発芽および出芽が無処理区に対して早まる傾向が観察され,特に「さんさんまる」および「大地の星」で促進効果が大きかった.プライミング処理は,北海道の栽培品種に対して広く低温下での発芽・出芽の促進効果が見られ,寒地における直播栽培の普及に貢献する技術となる可能性がある.