日本作物学会紀事
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栽培
エリアンサス群落における株の発育変異の解析
金井 一成森田 茂紀
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2021 年 90 巻 1 号 p. 29-37

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抄録

セルロース系のエネルギー作物の1つとして,エリアンサスが注目されている.エリアンサスは,苗を定植した後,毎年の再生過程で旺盛な生育を示し,個々の株が大型化していく.それに伴って群落を構成している株の生育に大きな差異が認められるようになり,場合によっては枯死する株もある.そこで本研究では,エリアンサス群落を構成する株の生育変異の年次推移について,個体群生態学的な観点から解析を試みた.その結果,定植年数に関わらず,茎数/株が小さいものの頻度が高く,茎数/株が大きいものほど頻度が低い傾向が年々,拡大した.また経年変化を見ると,苗の定植後,群落を構成する株の茎数が増加しながら,生育変異が拡大していくことが明らかになった.そこで,この生育変異について周囲から受ける被圧との関係を検討したところ,全体傾向として,茎数/株が小さいと,その株が受けると考えられる被圧が大きく,茎数/株が大きいと被圧が小さい傾向が認められた.少なくとも,エリアンサスを数年にわたって栽培した範囲では最終収量一定の法則が成り立つ可能性が示唆され,早期に人為的な間引きを行うと収量が増加する可能性があり,また株の生育変異が拡大しにくくなる可能性があるため,収穫時の作業効率もあがると考えられる.

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© 2021 日本作物学会
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