日本作物学会紀事
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栽培
肥効調節型肥料を用いた穂肥重点施肥がパン用コムギの収量と子実タンパク質含有率におよぼす影響
水田 圭祐荒木 英樹中村 和弘松中 仁高橋 肇
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2021 年 90 巻 1 号 p. 18-28

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抄録

穂肥重点施肥はパン用コムギの高品質多収栽培に適しているが,速効性肥料を用いた分施体系のため,追肥作業に時間や労力がかかることが課題となっている.本研究では,省力的に穂肥重点施肥の肥効を再現できる肥効調節型肥料の種類や施用時期を明らかにするため,熊本県と山口県でそれぞれ4作期および2作期にわたって検証した.熊本県で栽培した「ミナミノカオリ」の収量は,肥効調節型肥料の種類に関係なくいずれの作期も穂肥重点施肥区と同程度であった.子実タンパク質含有率は,2016/17年(2016年冬播種~2017年春収穫,以下同様)の全量基肥IB区と全量穂肥CDU区では低くなる傾向があったが,その他の作期ではいずれの肥効調節型肥料を用いても穂肥重点施肥区と同程度であった.成熟期の地上部窒素蓄積量は,いずれの作期でも茎立ち開始期に尿素とCDUを施用した穂肥尿素+CDU区と全量基肥LP30区が穂肥重点施肥区と同程度まで高まった.山口県で栽培した「せときらら」では,2017/18年の穂肥尿素+CDU区が穂肥重点施肥区と同等の収量および成熟期地上部窒素蓄積量となった.倒伏は2018/19年の熊本県における試験でのみ発生し,黄熟期の倒伏程度は全量穂肥CDU区が0.0と慣行分施区や全量基肥LP30区の2.6および2.3に比べて低かった.全量穂肥CDU区で倒伏程度が低かった原因は,慣行分施区や全量基肥LP30区に比べて稈長が16~76 mm短く,稈基部の節間長が8.4~23.6 mm短くなったためであった.茎立ち開始期に肥効調節型肥料および尿素を施用する全量穂肥施肥体系は,省力的なパン用コムギの高品質多収栽培に適した栽培方法であると考えられた.

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