日本作物学会紀事
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品質・加工
日本麺用コムギにおけるGlu-A1座およびGlu-D1座支配のグルテニンサブユニット構成,タンパク質含有率の違いが製菓適性に及ぼす影響
谷中 美貴子高田 兼則船附 稚子石川 直幸
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2021 年 90 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

Glu-A1座およびGlu-D1座支配のグルテニンサブユニット構成が異なる4種類の日本麺用コムギの準同質遺伝子系統を開花期窒素施用量を変えて栽培し,得られた小麦粉タンパク質含有率が異なる小麦粉を用いて,グルテニンサブユニット構成,タンパク質含有率の違いが製菓適性に及ぼす影響を,スポンジケーキ試験,クッキー試験およびSRC (Solvent Retention Capacity)により調査した.小麦粉タンパク質含有率は7.7~11.7%で,小麦粉タンパク質含有率が高まると,スポンジケーキの比容積,クッキーの直径,スプレッドファクターは有意に小さくなり,小麦粉タンパク質含有率と有意な負の相関関係を示した.スポンジケーキの比容積には系統間で有意な差はなかった.クッキーの直径,スプレッドファクター,乳酸SRCには系統間で有意な差がみられ,Glu-A1座サブユニットが欠失した系統では,Glu-A1座サブユニット1を持つ系統に比べて,クッキーの直径とスプレッドファクターが大きく,乳酸SRCが低かった.スポンジケーキの比容積とクッキーの直径およびスプレッドファクターは,グルテンの強さを示す乳酸SRCと有意な負の相関関係を示したが,その相関関係は小麦粉タンパク質含有率との相関関係より弱かった.これらの結果から,製菓適性には小麦粉タンパク質含有率が強く影響すること,クッキー適性にはグルテニンサブユニット構成が影響し,Glu-A1座サブユニットの欠失がクッキーの直径やスプレッドファクターに正の効果を持つことが示唆された.

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