2021 年 90 巻 1 号 p. 64-71
山口県では酒造好適米「山田錦」の需要が増加傾向にあり,実需者からは高品質化と安定供給が求められている.本研究では,近接リモートセンシングによって,「山田錦」の窒素蓄積量を推定することが可能かどうか,および収量関連形質との間にどのような関係があるのかを明らかにすることを目的とした.2016年から2018年にわたり,地力の異なる複数圃場に様々な窒素施肥区を設け,生育量や収量を評価した.「山田錦」の地上部窒素蓄積量,総籾数および玄米タンパク質含有率は,近接リモートセンシングにより近赤外光と赤色光の反射率から得られるS1値と密接な正の相関関係を示し,その回帰直線から「山田錦」の適正籾数あるいは適正タンパク質含有率となる穂揃期の目標S1値32~36を設定できた.穂揃期のS1値は,幼穂形成期以降の窒素施肥量(穂肥窒素量)に比例して高くなることから,目標とする穂揃期のS1値と幼穂形成期に測定したS1値から必要な穂肥窒素量を算出することが可能であると考えられた.