日本作物学会紀事
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栽培
水稲乾田直播栽培において苗立ちを疎にするとより穂重型の生育になる
藤本 寛
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2021 年 90 巻 2 号 p. 142-152

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抄録

乾田直播栽培における苗立ち数の違いが生育および収量構成要素に与える影響を調べるために,慣行播種量で条播し,苗立ち後,間引きにより疎播区(約17本/m2),中播区(約33本/m2)および間引きなしの密播区(43~169本/m2)を設定した.多収品種「みなちから」と「北陸193号」を供試し,2016~2018年の3か年,試験を実施した.苗立ち数の違いは生育および収量構成要素に顕著に反映した.疎播区と中播区では密播区に比べて,面積あたり茎数は少なく,止葉葉齢は多く,出穂期は遅くなった.平均一茎重は,栄養成長期では差がなかったが,出穂期以後は疎播区と中播区が密播区より有意に重かった.収量構成要素では,疎播区の穂数/m2は密播区よりも15~37%有意に少なく,一穂籾数は8~39%有意に多かった.以上,疎播区は密播区よりも相対的に穂重型の生育となることが示されたが,その程度を数量的に評価するために草型指数を用いて検討したところ,同じ品種であっても苗立ち数の違いにより異なる草型に分類され,明らかな草型の変化といえた.一方,収量は疎播区が密播区より減少する傾向であったが,2018年の「北陸193号」では,疎播区は密播区の1/10の苗立ち数でありながら粗玄米収量は同等の900 g/m2以上を得た.苗立ちを疎にすることで生じる草型の変化を収量向上につなげるためには施肥法等をより穂重型となる生育特性に適合させる検討がさらに必要である.乾田直播栽培の生育制御において,苗立ち数,播種量は重要な要因であると考えられた.

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