わが国の暖地に位置する福岡県と寒冷地に位置する秋田県において,それぞれの県の主要品種である「ヒノヒカリ」と「あきたこまち」を用いて実施した栽培試験の結果を比較した.福岡県の「ヒノヒカリ」は秋田県の「あきたこまち」より,移植期から出穂期までの日数が短いが,出穂30日前から出穂30日後までの気温は高く,その間の日射量が多かった.「ヒノヒカリ」は「あきたこまち」と比較して,葉身が長く,穂揃期の葉面積と全乾物重が大きかった.そして,総籾数は同等であったが,登熟歩合が低いために,収量は低かった.一方,農林水産省が公表している作物統計においては,福岡県は秋田県と比較して,総籾数が少なく,かつ登熟歩合が低いために,収量が低かった.以上の結果から,暖地の福岡県は寒冷地の秋田県より収量が低い気象要因として,出穂前の高温により総籾数の確保が困難になること,および出穂後の高温により登熟能力が低くなることの両方の可能性が考えられた.