日本作物学会紀事
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栽培
稲麦二毛作水田における無リン酸と無カリで遅効性被覆尿素肥料のみを用いた水稲湛水直播栽培の生育と収量
原 嘉隆
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2021 年 90 巻 2 号 p. 168-176

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抄録

暖地での水稲湛水直播栽培はスクミリンゴガイの食害を受けやすいが,大豆作との輪作等の工夫によって実施する生産者が増えている.しかし,湛水直播用肥料は少なく,移植用肥料を利用せざるを得ない状況にある.直播では苗立ち後の分げつが旺盛で,特に暖地で過繁茂による倒伏が起きやすく,その回避のために播種量を減らすと十分な苗立ち本数が得られないという問題が起きかねない.このため,播種量を減らさずに過繁茂を抑えられるよう初期の窒素肥料を控えることが望ましいと考えた.湛水直播の実施面積が少ない暖地での湛水直播用肥料の流通は現実的でない.そこで,稲麦二毛作水田において,リン酸とカリを無しとし,速効性窒素も無しとし,移植用肥料で施肥される窒素量の8割を生育後半に溶出する遅効性被覆尿素で施肥する方法を検討した.生産者の水田を含む3地区において通算3年で移植用肥料を用いた場合と比較した施肥試験を実施した.その結果,いずれの地区でも生育と収量に有意差は認められなかった.したがって,稲麦二毛作水田での湛水直播栽培では,遅効性被覆尿素のみの施肥法が利用できる.本施肥法は,肥料代も安く,散布量も少ないので省力化も実現できる.

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