わが国の水稲栽培に関して,生育期間別の気温・日射量,および収量・収量構成要素に関するデータを年代別・地域別に整理し,その相互関係について解析した.41道府県の1963~1967年,1988~1992年,および2014~2018年の各年代について,気象庁が公表している気象データおよび農林水産省が公表している収量データを用いた.出穂29日前~出穂日の平均気温をT2,平均日射量をS2,出穂1~30日後平均気温をT3,平均日射量をS3として算出した.これらの気象要因の中で,T2が収量と最も関連が深かった.すなわち,いずれの年代においても,T2が低い道府県は, 総籾数が多く,収量が高いという関係が認められた.年代間を比較すると,気温が低い道府県は収量が高いという関係が経年的に強くなった.このことから,水稲栽培の技術レベルが全国的に向上したこと,および生育期間の気温が上昇したことにより,収量の地域間差異を決める上での高温の負の寄与度が経年的に増していることが示唆された.一方,各道府県においては,T2が高い年次が,S2も多く,収量は高い傾向が示された.このことから,地球温暖化によって気温が高くなっても,それに伴い日射量も増加すれば,収量は必ずしも低下するとは限らない可能性も示された.