業務用米の栽培には低コスト,多収性が求められ,土壌条件や生育状況に応じた効率的な施肥管理が望まれる.近年リモートセンシングで生育状況を捉える研究は多いが,その情報を効果的に施肥管理情報に翻訳するシステムの開発は遅れている.本研究では,センシング情報を活用した施肥管理支援の提供を目的に,窒素管理のための簡易生育・収量予測モデルの開発を目的とした.そのため2017,2018年に,黒ボク土,沖積土の2土壌型および3段階の窒素施肥条件下で多収・良食味の業務用米品種ゆみあずさと普及品種のあきたこまちの生育・収量性を比較するとともに,窒素施肥量の決定に利用可能な簡易生育・収量予測モデルを構築した.両年において乾物重,窒素吸収量,収量には年次,土壌,窒素施肥効果がみられた.いずれの条件でもゆみあずさの多収性が示され,特に生育前半に有利な受光態勢がその主因と考えられた.葉面積指数(LAI)増加速度と窒素吸収速度は密接な関係があったことから,両者の関係性に基づく簡易生育モデルを構築した.パラメータの交差検証の結果,モデルの予測精度は,地上部乾物重では両年で決定係数0.98と高かったことから,異なる土壌,品種,年次においても,リモートセンシングで比較的容易に計測できるとされるLAI,窒素吸収量から,乾物生産の高精度な予測が可能なことが示された.ただし,粗籾収量の決定係数は2017年の0.91に対し2018年では0.83とばらつきが見られ,モデルにおける収穫指数の扱いについては課題が残った.