日本作物学会紀事
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栽培
点滴灌漑による土壌水分制御がサトイモの収量および乾物生産に及ぼす影響とその生理生態的要因
見野 百萌永吉 智己桂 圭佑安達 俊輔和気 仁志大川 泰一郎
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2022 年 91 巻 4 号 p. 280-290

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抄録

サトイモは乾燥に弱く,高収量達成のためには特に夏季の灌水が重要となるが,生産現場では灌水のための労力および水源の確保に課題がある.これを解決する栽培法の一つに,省力,節水型の灌水方法である点滴灌漑がある.そこで,2018年から2020年の3年間,無灌漑区,朝30分間点滴灌漑区および朝夕各30分間点滴灌漑区を設け,処理区間の生育,乾物生産および収量の相違を比較し,さらに水分生理学的特性に着目して要因を解析した.その結果,無灌漑区に比較して両点滴灌漑区ともに梅雨明け後の土壌水分が高く保たれ,地上部の草高,葉面積および乾物生産量が大きくなり,生育後期の塊茎生産速度および収穫時の塊茎収量が増加した.その生理生態的要因として,梅雨明け後の根系が発達し吸水速度が大きくなり,葉の水ポテンシャルが日中高く維持され,梅雨明け後の高温下でも気孔をよく開き,高い光合成速度を維持していたことが示された.これらの結果から,点滴灌漑による土壌水分制御は,温暖化により頻発する夏季の干ばつを回避させ,効果的に無灌漑下よりもサトイモの乾物生産および塊茎収量を増加させることが明らかとなった.また,朝30分間点滴灌漑だけでも朝夕各30分間点滴灌漑と同程度の増収効果があることが示された.

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© 2022 日本作物学会
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