日本作物学会紀事
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栽培
水稲の初冬直播き栽培における播種時期と種子コーティングが出芽率に及ぼす影響の広域評価
鈴木 健策柏木 純一中島 大賢長菅 輝義望月 俊宏安彦 友美古畑 昌巳大平 陽一千葉 雅大木村 利行矢野 真二阿部 光希松田 晃齋藤 寛笹川 正樹髙橋 元紀西村 拓濱本 昌一郎常田 岳志西 政佳由比 進下野 裕之
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2022 年 91 巻 4 号 p. 291-302

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抄録

水稲の初冬直播き栽培の広域適応性を明らかにするため,全国11地点において同一採種地・採種年の共通種子を用い,播種時期ならびに種子コーティングが出芽率に及ぼす影響を2シーズン評価した.種子コーティングを行わない無処理では,初冬直播きの出芽率が春播きより低かったものの,種子コーティングを行うことで向上,その差は縮小した.初冬直播きの播種時期と出芽率の関係に着目すると,東北地方の青森県,岩手県,秋田県,山形県,福島県で10月と11月に明瞭な違いが認められない一方,北海道で10月播種が11月播種より出芽率が高く,逆に新潟県で11月播種が10月播種より高かった.温暖な地域では1月播種が11月播種より出芽率が高かった.また播種から出芽までの掘り取り調査における種子の発芽能の推移から,種子コーティングを行うことで発芽能は維持されることを明らかにした.しかし春まで生存した種子の最終的な出芽率は2018/19年が平均で55%,2019/20年が69%だった.両シーズンを比べると,2018/19年はより暖冬傾向で,雪が少なかった2019/20年は11地点中8地点で出芽率が高い傾向だった.いずれの地域でも出芽率の最大値が39~86%となり,実用化の目標とした35%を超えた.以上,2シーズンの11地点の連携試験より,初冬直播きは,従来可能とされてきた温暖な地域に加えて,種子コーティングを行えば寒冷な地域にも適応でき,適切な条件下では実用可能なレベルの出芽率を得ることが可能で,広域適応性はあると結論した.

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