日本作物学会紀事
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収量予測・情報処理・環境
育種ヒストリカルデータを用いたダイズ発育モデルの構築とパラメータ最適化手法の比較
寺本 大輝小野木 章雄
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2023 年 92 巻 1 号 p. 28-40

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抄録

過去55年にわたるダイズ育種ヒストリカルデータを用いて50品種・系統について播種期から開花期までを対象とした発育モデルの構築を行った.発育モデルのパラメータ最適化において3種類の手法,Nelder-Mead法 (NM),群粒子最適化法 (PSO),遺伝的アルゴリズムを比較した.交差検証により各手法の予測能力を比較すると差は小さかったものの,PSOが有意に他2手法より予測が正確であった.NMは初期値への依存性が他の2手法より高く,大域的最適解に達するためには異なる初期値から多数回最適化を繰り返す必要があった.ヒストリカルデータに含まれる記録数は品種・系統により大きく異なるが,最適化に300記録以上用いた場合,開花まで日数の予測値と観察値のピアソン相関係数 (r) は0.92以上,平均二乗誤差平方根 (RMSE) は4.52日以下であり,極端に正確さが悪化することはなかった.ヒストリカルデータに含まれない外部データの開花期を予測したところ,PSOで得られたrとRMSEはそれぞれ0.98~0.99及び3.20~4.34日であり,開花期予測におけるヒストリカルデータの有用性が示された.最適化されたパラメータ値を品種・系統の育成地ごとに比較すると手法間で差異はみられたものの,高緯度における限界日長の延長など一定の傾向が観察された.本研究はヒストリカルデータから発育モデルを構築する際に有益となる情報を提供するものである.

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