日本作物学会紀事
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品質・加工
水稲の登熟期高温処理が米飯の食味,物性,米粉粘度特性およびアミロース含有率に及ぼす影響
板谷越 重人石橋 俊明松井 崇晃金井 政人橋本 憲明重山 博信神戸 崇
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2023 年 92 巻 2 号 p. 119-128

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抄録

高温登熟による米飯の食味低下の影響を解明するために,温水かけ流しほ場により高温ストレス下で栽培された水稲の生産物について,玄米品質,食味官能評価,米飯物性,みかけの白米アミロース含有率および米粉粘度特性を3カ年にわたり調査した.高温処理によって,食味官能評価の総合評価,外観,味は全ての品種で低下し,粘りは弱まり,硬さは増加した.米飯物性では,表層の粘りが11%低下,表層のバランス度 (粘り/硬さ比) が10%低下,全体のバランス度が6%低下し,全体の硬さが4%上昇した.みかけの白米アミロース含有率は,10%低下した.米粉粘度特性では,粘度上昇開始温度が1.2℃上昇,最高粘度は9%上昇,最低粘度は5%上昇,ブレークダウンは11%上昇した.さらに,食味官能評価と関連性をもつ特性を把握するため,他の調査項目との相関係数を確認した.食味官能評価の総合評価および粘りと最も高い相関を示した項目は,米飯物性の表層の粘り,表層および全体のバランス度であった.このことから,高温登熟による食味低下の要因は,米飯表層の粘りが減少することと表層および全体のバランスが変化することである可能性が示唆された.米粉粘度特性における粘度上昇開始温度も同様に高い相関を示し,食味への影響を数値化するための指標として有用であり,少量サンプルでの食味向上を育種目標とした材料選抜にも利用できると考えられた.食味官能評価の硬さと最も高い相関を示した項目は表層のバランス度であり,物理性における硬さの指標として考慮された.

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© 2023 日本作物学会
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