日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
研究・技術ノート
逆転ロータリを活用した一工程浅耕播種による北部九州における気象リスク下でのダイズの減収抑制効果
松尾 直樹中野 恵子大段 秀記深見 公一郎高橋 仁康
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 92 巻 2 号 p. 161-172

詳細
抄録

北部九州のダイズ主産県である福岡県と佐賀県の直近20年間の単収と7~10月の降水量を,2001~2010年と2011~2020年に分けt検定を行ったところ,直近10年の有意な単収の減少と,降水量の増加が認められた.また,7~10月の総降水量は単収と有意な負の相関関係にあり,近年の低収が生育期間の湿害に起因するものと示唆された.本研究では,湿害によるダイズの減収を抑制すること目的に,逆転ロータリを活用した一工程浅耕播種に着目し,2019~2021年に福岡県内の現地圃場にて生産者慣行播種と生育,収量,作業性能を比較し,その効果を検証した.2019年は播種直後の7月中下旬,2020年は着莢始期の9月中旬,2021年は栄養成長期の8月上中旬に多雨条件となった.2019年の慣行播種は播種直後の多雨で出芽不良となり再播種が実施されたが,一工程浅耕播種では苗立ちが確保され再播種は不要であった.その結果,慣行播種は晩播による生育量不足で一工程浅耕播種より36%減収した.2020,2021年は慣行播種の多雨時の現場飽和継続時間が一工程浅耕播種より2倍程度長く,両年の慣行播種は一工程浅耕播種よりそれぞれ26%,40%減収した.これらの結果から,慣行播種の減収要因は湿害と考えられ,一工程浅耕播種は様々な生育ステージで発生する湿害に起因する減収を抑制する効果があった.同播種法の作業速度は3年平均で3.3 km/hと不耕起播種機並みで,作業時間は慣行播種より3.5分/10a短く,砕土率も14%高かった.以上の結果から,一工程浅耕播種は高能率の作業性を有し,湿害による減収を回避できる播種技術であることが示された.

著者関連情報
© 2023 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top