日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
北陸地域における水稲品種「にじのきらめき」の多収と良食味を両立可能な諸形質の条件
石丸 努岡村 昌樹長岡 一朗金 達英山口 弘道梶 亮太大平 陽一
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2023 年 92 巻 2 号 p. 173-183

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抄録

水稲品種「にじのきらめき」は北陸地域で中生熟期の多収良食味品種である.本研究では「にじのきらめき」の多収と良食味が両立可能な栽培法を開発するために,収量・収量構成要素・食味関連形質の関係や,目標籾数を達成するための穂揃期の窒素栄養状態,および穂首分化期の生育量と穂肥窒素量との関係,を明らかにすることを目指した.精玄米重 (収量) は単位面積あたりの籾数や穂数と正の相関関係があり,両形質の関係はそれぞれ回帰式で表すことができた.また同じ総窒素施用量でも分施体系 (穂肥あり) により精玄米重は増加した.炊き上がり直後の食味官能試験において,玄米タンパク質含有率と食味相対値 (総合)または粒厚との関係には負の相関関係があった.これらの結果の解析により,籾数37.5千粒 m–2,玄米タンパク質含有率 (水分15%換算) 6.5%以下で精玄米重は700 g m–2を少し上回り,多収と良食味が両立できると考えられた.籾数37.5千粒 m–2を達成するための穂揃期における地上部窒素吸収量の理論値は13.2 g m–2であった.適正な穂首分化期における生育指標値(草丈 cm×茎数 本 m–2×SPAD)は18.2~21.9であり,籾数37.5千粒 m–2を達成するために必要な穂肥窒素量は生育指標値に応じて2~4 g m–2と推定された.以上の結果より,本研究では北陸地域において「にじのきらめき」の多収と良食味の両立に重要な役割を果たす穂首分化期・穂揃期・成熟期の諸形質の条件を提示することができた.

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© 2023 日本作物学会
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