日本作物学会紀事
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栽培
水稲無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培における催芽種子及び根出し種子の保存条件と保存可能期間
伊藤 景子白土 宏之今須 宏美古畑 昌巳
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2023 年 92 巻 4 号 p. 305-314

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抄録

無コーティング種子を用いた代かき同時浅層土中播種栽培において,種子予措と圃場準備作業の競合を回避するためには,種子予措を終えた種子の保存が必要である.そこで本研究では,本播種栽培で使用する鳩胸催芽種子 (以下催芽種子) や根出し種子について保存条件および保存可能期間を検討した.短期保存の場合は常温,長期保存の場合は低温による保存を想定し,まず室内試験において低温保存時の最適温度を検討した.催芽種子と根出し種子を5,10,15℃に設定した人工気象器内で0,5,10,14,21日間保存後,アグリポットに播種し,出芽個体数および生育を調査した.その結果,10℃で保存した種子は5℃および15℃で保存した種子に比べ出芽率の早期低下や,14日以上の長期保存における生育低下が認められなかったことから,低温での保存に適すると考えられた.次に,催芽種子や根出し種子を常温で0 (対照区),5,10,15日間,10℃の低温で20,29日間保存し,保存後の幼芽および幼根の伸長や圃場播種後の生育,苗立率,出穂期から保存可能期間を検討した.常温で5~15日間,低温で20日間保存した催芽種子や根出し種子の苗立率や初期生育,出穂期は,対照区との有意差は認められなかった.以上より,催芽種子は,常温 (15.9~22.4℃) では15日まで,低温 (約10℃) では20日までは保存可能であることが示された.また根出し種子は,常温 (15.0~18.6℃) では15日まで,低温 (約10℃) では20日までは保存可能であることが示された.

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