苗を移植する慣行の挿苗栽培と比較して,種いもを直接,圃場に植付ける直播栽培ではカンショ生産に要する労力を削減できる.しかしながら,直播栽培では出芽までに時間を要するため生育初期に雑草害を受けやすい.このため,出芽日を把握して適切に除草作業を計画することが重要となる.本研究では,これまで知見のない直播栽培カンショの出芽予測の端緒とするため,有効積算地温に基づきカンショの出芽までの日数 (出芽日数) が予測できるかを検討した.試験ではカンショ7品種を用いて,2018年と2019年に計4作期で直播栽培して,日平均地温と出芽日を調査した.続いて,地温の有効温度の下限値 (8,10,12,15℃) と上限値 (20,22,24,26,28℃) を設けて,7品種の出芽まで有効積算地温を算出し,全品種を平均した出芽日数の実測値と予測値の差の二乗平均平方根誤差 (RMSE) が最小となる地温の下限値,上限値の組合せを検討した.この結果,下限値10℃,上限値24℃に設定したRMSEの平均値が2.48日で最小となった.次に, 栽培年の異なる独立データにより出芽日数の予測精度を検証した.直播栽培適性の高い3品種を用いて,2020年に3作期で直播栽培し,出芽日数の実測値と予測値を比較した.この結果,3品種,3作期のRMSEの平均値は3.01日となり,簡易な地温の測定に基づいた有効積算地温で,直播栽培したカンショ品種の出芽日数を3日程度の誤差で予測できることを示した.