日本作物学会紀事
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栽培
十勝地方のラッカセイ栽培における適正な栽植密度の検討
佐藤 颯太石山 真士田中 一郎秋本 正博
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2024 年 93 巻 2 号 p. 122-131

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抄録

十勝地方のラッカセイでは適正な栽植密度の情報がなく,習慣的に5~6株 m–2で栽培が行われている.本研究では,異なる栽植密度で栽培したラッカセイの生育や収量を比較することで十勝地方における適正な栽植密度を検討した.2021年と2022年に早生品種 「タチマサリ」 を帯広畜産大学実験圃場で栽培した.植え穴の間隔が30 cm,20 cm,および15 cmのマルチを用いることで,栽植密度が5.8株 m–2 (5.8株区), 8.7株 m–2 (8.7株区),および11.6株 m–2 (11.6株区)となる3つの試験区を設置した.5.8株区では,収穫期まで茎葉部が生長し続けたが,8.7株区と11.6株区では葉面積指数が最大となった後に生長が停滞した.その結果,登熟期の株は8.7株区と11.6株区で小型であり,株当たりの稔実莢数も少なかった.稔実莢率は,5.8株区に比べ8.7株区と11.6株区で高く,5.8株区では未熟莢が多数発生した.単位面積当たりの子実収量は,5.8株区の168 g m–2に比べ8.7株区で254 g m–2,11.6株区で264 g m–2と有意に高く,栽植密度を高くすることで株当たりの生産量は低くなるものの,単位面積当たりの子実収量を改善することができた.11.6株区は8.7株区に比べ栽培に種子を多く必要とするほか,茎葉の繁茂による病害の発生が目立った.十勝地方における 「タチマサリ」 の栽植密度として,本研究の設定のなかでは8.7株m–2が適正と考えられた.

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