日本作物学会紀事
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栽培
温暖地西部における黒ダイズ新品種「黒招福」の狭畦密植栽培の検討
川崎 洋平浅見 秀則藤本 寛
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2024 年 93 巻 2 号 p. 132-139

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抄録

温暖地西部の中山間地域では小区画・分散圃場が多く,大規模化に伴う省力・低コスト化が難しいことから生産者の生産性の向上が課題となっている.近年,温暖地のダイズ栽培において,選択性茎葉処理型除草剤の活用による中耕培土を省略した狭畦密植栽培が普及しつつある.本研究では機械収穫適性に優れる黒ダイズ新品種「黒招福」を対象として,中山間地域において省力的な狭畦密植栽培が可能であるか検討した.試験は2021年と2022年に西日本農業研究センター所内 (広島県福山市) と中山間地域の現地農家圃場 (広島県東広島市) の水田転換畑圃場にて行った.所内においては,黄ダイズ品種「サチユタカA1号」を比較対象として,6月下旬の標播と7月下旬の晩播を設定した.株間は45 cm,30 cm,15 cmの3条件を設定し,無中耕無培土とした.現地農家圃場では,条間30 cmの狭畦密植栽培にて7月上旬に「黒招福」の播種を行った.所内の標播では年次によっては「黒招福」の倒伏程度が大きくなった.一方,晩播においては「黒招福」の倒伏程度は両年ともに「サチユタカA1号」よりも小さかった.収量については標播では年次と品種の交互作用が有意であったものの,晩播では有意な品種間差は認められなかった.現地農家圃場においても,2か年ともに倒伏することなく正常に成熟期に到達し,2022年の全刈収量は現地の標播の「サチユタカ」を上回った.以上の結果から温暖地西部の中山間地域において,「黒招福」は晩播において黄ダイズ品種と同様に省力的な狭畦密植栽培が可能であると考えられた.

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