日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
パン用コムギ品種「せときらら」における可変追肥による子実タンパク質含有率の安定化のためのリモートセンシングを用いた収量予測
村田 資治
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2024 年 93 巻 2 号 p. 155-162

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抄録

パン用コムギ「せときらら」の収量をリモートセンシングで予測し,その予測収量に応じて開花期に可変追肥することで子実タンパク質含有率 (以下,子実タンパク) を制御可能かどうか検証した.試験は3年間行った.1年目と2年目は収量予測モデルを作成した.各年次において茎立ち期までの施肥量が異なる6処理区を設置した.穂揃期に植生指数 (NDVIとGNDVI),穂数,SPAD値,成熟期に収量を調査した.2年間のデータから,植生指数ごとに収量の単回帰直線を作成し,これを収量予測モデルとした.3年目は可変追肥の有効性を検証した.11月下旬 (標播) と12月中旬 (晩播) に播種した群落を対象に,標播の開花始期と晩播の出穂期に植生指数を取得し,収量を予測した.既存の追肥量予測モデルを用いて,予測収量から追肥量を算出し,開花期に追肥した.成熟期に子実タンパクを調査した.収量予測モデルでは,GNDVIはNDVIと比べて回帰直線の決定係数が高く,穂数およびSPAD値とも有意な相関があった.さらに予測精度も高かったことから,GNDVIによる収量の回帰直線を収量予測モデルとして採用した.可変追肥の検証では,子実タンパクは標播ではほぼ目標値通りであったが,晩播では目標値を大幅に超過した.晩播では収量が過大評価されたことと,登熟期間中の高温により子実タンパクが高まったことが誤差の原因と考えられた.以上より,標播ではGNDVIによる収量予測と可変追肥が有効であるが,晩播ではモデルの改良が必要であることが明らかとなった.

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