日本作物学会紀事
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収量予測・情報処理・環境
2000年以降の北部九州におけるコムギ収量を低下させる降水パターン
西尾 善太三原 実秀島 好知広田 知良
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2024 年 93 巻 3 号 p. 195-208

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抄録

2000年以降の北部九州のコムギの10 a当たり収量は,2007~08年に約500 kgであったが,2010~11年に約300 kgまで減少し,2021~22年は再び約500 kgに回復した.そこで,気象条件がコムギ収量に与える影響について 2000~2022年の23年間を対象として日単位の詳細な解析を行った.筑紫平野のコムギ収量を目的変数として重回帰分析を行った結果,12月10~21日および4月12~23日の降水量および2月17~3月1日の日照時間の合計3つの気象条件が5%水準で有意な説明変数として選択された.それぞれの標準偏回帰係数は,12月10~21日の降水量が–0.357,4月12~23日の降水量が–0.433,2月17~3月1日の日照時間が0.407で,自由度調整済みの重相関係数は0.826,決定係数は0.682であった.12月10~21日および4月12~23日の降水量はシンクサイズを制限しており,前者は穂数と1 m2当たり粒数,後者は千粒重を低下させていた. 2月17~3月1日の日照時間は,節間伸長が盛んな茎立期であるため,シンクおよびソースサイズの決定に関わるとみられた.北部九州のコムギで安定した多収を達成するには,12月と4月の2つの特定時期の降水によるシンクサイズの制限を回避することが重要である.

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