2025 年 94 巻 1 号 p. 49-54
千葉県では,2016年にサツマイモ「ベニアズマ」において,いも長がいも径の2.5倍以内となる丸いもの発生が大きな問題となった.その原因としていもの長さが決定する生育初期の乾燥の影響が考えられたことから,生育初期の灌水が生育,収量と丸いもの発生に及ぼす影響を調査した.栽培管理は植付けから50日間は雨除けトンネルを被覆して,晴天日と曇天日はトンネルを開放した.無灌水,植付け直後,植付け10日後,植付け10日後と30日後に灌水を行う試験区を設置し,土壌水分の推移と初期生育と収量,いも形状について調査した.灌水時の土壌水分張力(pF)は,灌水後7~10日で無灌水と同程度まで再上昇した.収穫適期のいもの外観品質は灌水によって向上した.いもの形状については,植付け10日後に灌水を行った2区で無灌水に比較し,いも長が長くなることで丸いもの発生が減少した.一方で,植付け直後のかん水では,初期生育が良好かつ収穫適期の外観品質が向上するがいも長は無灌水区と変わらなかった.以上の結果から,植付け10~20日頃の生育初期の乾燥が丸いもの発生原因となること,植付け10日後の灌水が丸いも対策に効果的であることが示唆された.