日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
研究・技術ノート
北陸地域の水稲初冬直播き栽培における播種時期と種子生産年次および種子処理が出芽に及ぼす影響
大平 陽一
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 94 巻 1 号 p. 55-65

詳細
抄録

北陸地域における水稲初冬直播き栽培の播種早限を明らかにすることを目的として,新潟県上越市で2021年および2022年の10月中旬,11月上旬,11月中旬に品種「つきあかり」と「にじのきらめき」を播種し,翌年春の出芽率に及ぼす播種時期の影響を中心として,種子生産年次(前年産と当年産) と種子へのチウラム水和剤処理の影響についても評価した.10月中旬播種では,前年産種子の出芽率はチウラム水和剤の種子塗布処理の有無にかかわらず3%以下に留まった.一方,当年産種子を10月中旬に播種すると出芽率は31~65%であり,チウラム水和剤処理することで出芽率は20ポイント程度高まった.出芽率は播種時期が遅いほど高くなる傾向にあり,前年産種子でも10℃程度の低温保管と種子へのチウラム水和剤処理を前提に,11月中旬の播種により36~62%の出芽率が得られ,実用性があると考えられた.播種時期および種子生産年次による出芽率の差異は播種時の種子休眠性によると考えられた.「つきあかり」と「にじのらきめき」の前年産種子,当年産種子のそれぞれについて,播種時期ごとの必要播種量,および播種後年内の有効積算地温と有効積算気温に基づいた播種早限の目安を推定した.

著者関連情報
© 2025 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top