日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
ソバ前作緑肥作物としてのCrotalaria juncea,C. spectabillisおよびSesbania rostrataの台風被害による生育量と窒素およびリン吸収量の比較
鬼頭 誠
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2025 年 94 巻 1 号 p. 66-70

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抄録

本研究は,沖縄県でのソバ前作緑肥の台風による被害の程度を3種緑肥作物(クロタラリア属のジュンシアとスペクタビリスおよびセスバニア属のロストラータ)の強風による茎の折れと葉の萎凋および収穫時の生存個体数から比較した.また,ジュンシアとロストラータの生育量,窒素とリンの含有量など肥料成分の比較を行った.強風により茎の折れる個体数はジュンシアで有意に多く,潮風害による葉の萎凋個体はジュンシアとスペクタビリスでロストラータより有意に多かった.ロストラータではこれら被害はほとんど認められなかった.ジュンシアでは茎の折れた個体や葉の萎凋個体で再生する個体もあったが,スペクタビリスは再生せず,台風通過後の7月22日までにほぼ全ての個体が枯死した.生育量調査時の生存個体率はジュンシアで49%であったが,ロストラータでは87%であり,後者の強風や潮風害の抵抗性は非常に高いと考えられた.生育量,窒素含有量はジュンシアよりロストラータで高い傾向にあり,リン含有量はほぼ同程度であった.なお,ジュンシアでは個体数の減少により個体当たりの生育量が大きくなったことから茎のCN比がロストラータより顕著に大きくなり分解率の低下が懸念される結果であった.

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