日本作物学会紀事
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栽培
日本めん用コムギ品種「さぬきの夢2009」における茎数を基準とした可変施肥法の検証
水田 圭祐諸隈 正裕豊田 正範
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キーワード: コムギ, 収量, 穂数, 窒素, 可変施肥
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2025 年 94 巻 2 号 p. 125-134

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抄録

生育診断とその結果をもとに窒素を可変的に追肥する施肥体系 (可変施肥) は,コムギの収量を高い水準で安定させるために有効であるが,窒素の追肥時期や量の違いが収量や収量構成要素におよぼす影響についての知見は少ない.本研究では,コムギの多収栽培に有効な穂肥重点施肥をベースとした際,茎数が不足している群落では出芽揃い期 (GS11) や第4葉抽出期 (GS14) に窒素の施肥量を変化させることでより茎数や穂数,収量が確保しやすくなるか検証した.播種量を半分にした疎植区は,GS11の茎数が66~82本 m–2と,標準区の約半分であった.疎植区の最高分げつ数は,2作期ともGS11における窒素施肥量に関係なく同程度で,2021/22年ではGS14における窒素追肥の有無に関係なく約350本 m–2であった.最高分げつ数が増えなかったのは,節間伸長開始期までに地上部に蓄積された窒素量が施肥量の10%以下と少なかったためであった.疎植区の収量は,2021/22年ではGS11やGS14の窒素施肥量に関係なく標準区と同等の445 g m–2であった.2022/23年では,GS11に窒素を施肥しなかった区で最も高い692 g m–2となり,GS11の施肥量が多くなるほど低くなっていった.成熟期の地上部窒素蓄積量も収量と同様に2021/22年ではGS11とGS14の窒素施肥量に関係なく約7 g m–2であり,2022/23年ではGS11の窒素施肥量が多くなるほど少なかった.本研究を行った作期は分げつが増えにくい暖冬年または寡雨年であったが,GS14だけでなくGS11にも窒素を施肥する意義が薄かった.「さぬきの夢2009」で穂肥重点施肥をベースにする際には,確実な苗立ち数の確保が収量の高位安定化に重要であると考えられた.

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