日本作物学会紀事
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品種・遺伝資源
倒伏抵抗性水稲品種における強稈形質および強稈遺伝子ハプロタイプとその組合せ
西羽 瑞希千装 公樹山崎 将紀安達 俊輔大川 泰一郎
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2025 年 94 巻 2 号 p. 135-147

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抄録

暴風雨を伴う台風は,登熟期の水稲を倒伏させ,収量の減少と品質の低下を引き起こす.これまでは,主に草丈を低くすることで倒伏抵抗性が改良されてきたが,近年は台風の大型化により,短稈品種であっても倒伏することが問題となっている.そこで,本研究では,近年育成された水稲品種の倒伏抵抗性に関わる強稈関連形質を比較し,とくに太稈化について優良ハプロタイプとその組合せを比較検討した.その結果,挫折型倒伏抵抗性の指標である稈の挫折時モーメントには品種間で大きな差異がみられた.その要因を太さの指標である断面係数と稈の折れにくさの指標である曲げ応力に分けて検討したところ,飼料用品種は断面係数が大きく,良食味品種は断面係数が小さく曲げ応力が高いことが高い挫折型倒伏抵抗性に関わっていた.太稈化に関わる遺伝子のハプロタイプと断面係数との関係について検討した結果,断面係数が上位の品種はインディカ品種や熱帯ジャポニカ品種由来の優良ハプロタイプを複数持ち合わせている一方で,わが国のジャポニカの良食味品種の多くはこれらの優良ハプロタイプをほとんど持たないことが明らかになった.強稈質の品種間差異をもたらす要因を明らかにするため,曲げ応力に関わる皮層繊維組織の形態や細胞壁構成成分に着目し「ヒノヒカリ」,「コシヒカリ」,「あきだわら」を比較した結果,3品種間の曲げ応力の差異には皮層繊維組織の厚さではなくヘミセルロース密度やデンプン密度が寄与していることが示唆された.

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