2025 年 94 巻 2 号 p. 159-168
北陸地域において,移植時期の作業分散を可能にする4月20日頃の極端な早植栽培をインド型および日本型多収品種に適応可能であるか検証するため,乾物重の推移と収量を早植栽培と普通植栽培で比較した.まず播種後15日の苗を用いた低温感受性試験において,供試したインド型多収品種「北陸193号」と「オオナリ」が日本型多収品種「あきだわら」と比較し,低温に弱いことを確認した.早植栽培における移植後3日間の平均気温は試験を行った4か年では7.8から17.3℃であり,極めて低い年もあった.そのため早植栽培では,インド型品種において,移植直後に全体に黄化し,下位葉や葉の先端を中心に葉が枯死した.この症状は気温の上昇とともに回復したものの,乾物重の推移から推定される,移植から成長の立ち上がりまでの期間はいずれの品種とも早植栽培の方が長かった.しかし,到穂日数も長かったため,成長の立ち上がりから出穂までの期間で表される出穂までの実質的な生育期間に作期間差はなかった.早植栽培では,暦日の出穂日は普通植栽培より早く,登熟期間の日射量は増加傾向にあった.結果として,全ての年次,品種において,平均精玄米収量が早植栽培により低くなることはなく,「北陸193号」ではむしろ高くなっていた.よってこの早植栽培技術は春先の作業競合を緩和できる有効な栽培技術の1つである可能性が示された.