酒米品種「山田錦」の幼穂形成期における生育量(草丈(cm)×茎数(本m–2)×SPAD値×10–4)と穂肥施用量を診断するスマートフォンアプリで取得する植被率を対象にして,それらの生育診断指標としての適用性を分散分析,相関分析等により比較検討した.移植期を早期,晩期に分けて2017年から2019年の3 年間6作期にわたり,基肥量4水準の試験区を設置して調査を行った.基肥量別・作期別の幼穂形成期の生育調査の結果は,すべての調査項目において施用量が多くなるほど増加傾向を示し,地上部窒素含量を除き作期間差の存在が確認された.また,生育量及びそれを構成する草丈,茎数,SPAD値は基肥量と作期との間に交互作用が検出されたが,植被率と地上部乾物重量及び地上部窒素含量については検出されなかった.植被率は生育量と同様に地上部窒素含量との間に正の相関を確認されるとともに,生育量との間にも強い正の相関が確認された.以上の結果,植被率は「山田錦」の生育診断の指標として生育量とほぼ同等であると考えられた.加えて,植被率はスマートフォンによる撮影で容易に取得でき,調査作業の効率化が図れることから,有望な指標であると結論付けられる.