日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
研究・技術ノート
高知県酒米品種「吟の夢」の各生産地域における高品質米生産のための移植適期の推定
赤木 浩介吉田 ひろえ近藤 始彦
著者情報
ジャーナル フリー

2026 年 95 巻 1 号 p. 91-98

詳細
抄録

高知県酒米品種「吟の夢」の玄米品質に対して適正な登熟期間の平均気温は23.6℃以下であることを前報において示した.本研究では,登熟期間の平均気温が23.6℃以下となる各生産地域の移植期を出穂予測モデルとメッシュ農業気象データを用いて推定した.高知県農業技術センター水田圃場 (南国市) で実施した3カ年計14作期の作期移動試験の結果から,推定誤差 (RMSE) 1.2日の「吟の夢」出穂予測モデルをDVR法により作成した.このモデルを高知県内の気象条件の異なる3カ年計17点の現地データに適用した場合でも,RMSEは3.3日であった.このモデルとメッシュ農業気象データを用いて,各生産地域の代表地点における平年の登熟期間平均気温が23.6℃以下となる最初の移植日 (移植早限日) を算出し,現在の移植盛期と比較したところ,8つの地域で移植早限日より移植盛期が早いことが分かった.また,平年の日平均気温が15℃以下となる初日の前日までに成熟期を迎える最後の移植日 (移植晩限日) を算出し,移植早限日と比較したところ,移植晩限日より移植早限日が遅い地域はなかった.さらに,作期移動試験における移植日と収量および蛋白質含有率の関係から試算した各地域における移植早限日の収量および蛋白質含有率の移植盛期に対する比は,それぞれ93~108%,102~111%であったものの,同生産額比は98~128%,「吟の夢」における蛋白質含有率の目標基準値7.3%を超える地域は1地域のみであった.

以上より,「吟の夢」の検査等級や蒸米酵素消化性といった玄米品質の向上に対して,どの地域でどの程度,移植時期を現在より遅くすれば良いか推定することができた.また,移植時期を移植早限日まで遅くすることが望まれる地域において,早限日に移植した場合でも,低温による登熟不良は回避でき,生産額や蛋白質含有率への影響は軽微である可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2026 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top