2026 年 95 巻 3 号 p. 242-249
本研究では,パン用秋播性コムギ品種「ゆめちから」の後継候補系統「北海266号」における窒素追肥の時期および施肥量の違いが収量と子実タンパク質含有率に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.試験1として2021年(播種は2020年)に芽室町の北海道農業研究センターで,試験2として2022年(播種は2021年)に美幌町の現地圃場で,起生期,幼穂形成期,止葉期における施肥量配分を変えた窒素追肥試験を実施した.「北海266号」は両試験地で「ゆめちから」よりも穂数が100本 m–2以上多く,多くの処理区で収量が高い傾向を示した.一方,子実タンパク質含有率は,両試験地において対照区に比べて起生期の追肥を省略または半減し,止葉期の施肥量を増加させた処理区で有意に高まった.収量と子実タンパク質含有率との間に有意な相関は認められなかったが,「北海266号」では穂数と子実タンパク質含有率との間に強い負の相関がみられ,穂数の増加が子実タンパク質含有率の低下と関連する特性が示唆された.さらに,施肥量の配分によっては,小穂の上位部や第2・第3小花で粒重低下が起こりやすい特性が明らかとなった.これらの結果から,「北海266号」は起生期の窒素施肥を抑え,止葉期に重点的に追肥を行うことで,穂数過多を回避しつつ高収量と高タンパク質含有率を両立できる可能性が示された.