日本作物学会紀事
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キャッサバ塊根の呼吸と収穫後の変質との関係
広瀬 昌平DATA Emma S.QUVEDO Marcelo A瓜谷 郁三
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1984 年 53 巻 2 号 p. 187-196

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抄録
キャッサバ塊根では収穫後生理的変質が進展するため, 貯蔵加工上問題がある. この報告はキャッサバ塊根の収穫, 貯蔵後における塊根の呼吸量の変化と生理的変質の進展程度およびPruning処理 (収穫2~3週間前の地上部刈込み処理) した塊根の呼吸量と生理的変質の変化をフィリピンで調査した結果である. 1. 人為的に傷害を加えたキャッサバ塊根 (基部および先端部を切断し, 10cmの長さにした) の呼吸量は収穫後1日目に急速に増加し, ピークに達した. そして, 収穫後5・6日目にもう一度呼吸量のピークがみられた. 無傷害塊根の呼吸量は傷害塊根の呼吸量より明らかに低い値を示した. 2. 甘藷塊根の呼吸量はキャッサバの呼吸量と明らかに異なり, 収穫直後に最高を示し, その後徐々に減少し, 明確なピークを示さなかった. 3. キャッサバ塊根の呼吸量の品種間差異が観察され, Golden Yellow種とKadabao種はHawaiian-5種より高い呼吸量を示した. 4. 無傷害と傷害塊根間に生理的変質の進展程度の差異が観察された. そして, 生理的変質の高い値を示した塊根はその低い値を示した塊根より一般に高い呼吸量を示した. 5. 収穫後4日間における塊根重量の平均減少率は低・高湿度条件下でそれぞれ2.92%と0.88%であった. 呼吸量が高く, 重量減少の高い値を示した品種ほど生理的変質程度も高い値を示した. 6. 刈込み個体から得られた塊根は無処理個体から得られた塊根より変質の進展が遅延した. 7. 刈込み個体と無処理個体から得られた塊根片 (約1.5cmの厚さに輪切りにされた) の呼吸量間の差異は収穫直後に前者が後者に比べて明らかに低いが, それ以後の差異は明確でなかった. 8. 生理的変質進展の時間的変化と呼吸量の変化から, 収穫後1日目にみられる呼吸量の増加は傷害呼吸によるものであり, 収穫後5・6日目にみられる2回目の増加は生理的変質によってもたらされる生理的, 生化学的変化によるものと考えられた.
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