日本作物学会紀事
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大豆における粒莢重比の変動とその要因
中村 茂樹中澤 芳則大庭 寅雄
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1987 年 56 巻 3 号 p. 372-378

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抄録
1. 粒莢重比(莢がら重に材する粒重の比)を同化産物の子実への分配効率を表わす形質の一つと規定した. 個体内部位別の粒莢重比を調査し, この形質の変動を検討するとともに, 多数品種の粒莢重比および莢がらの厚さを調査し, 粒莢重比の品種間差およびその要因を検討した. 2. 個体内莢間の粒莢重比の変動は, 粒重や莢がら重の変動より安定していた. これは粒重と莢がら重が密接な上の相関関係にあるためで, 粒の充実のためには莢がらの充実が重要であることが推察された. 3. 下位節莢は上位節莢より粒莢重比が高かった. これは下位節莢が個体の中央周辺にあり, 開花の早い莢が多く, したがって, 粒の充実期間が比較的長くなるためと推察された. 4. 莢がらの厚さと粒莢重比は密接な関係があり, 粒莢重比の品種間差の要因の一つは莢がらの厚さにある. 更に, その厚さを一定にしても粒莢重比に品種間差が認められた. これは粒重が等しくとも莢がら重に差があるからで, 莢がらの大きさに対する粒の充実程度も品種間差の要因になっていると推察された.
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