日本作物学会紀事
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イネの小胞子初期冷温処理による雄性不稔 : 第28報 新水管理法による冷害防止
佐竹 徹夫李 善龍小池 説夫刈屋 国男
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キーワード: 不稔, イネ, 水管理, 冷温, 冷害
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1988 年 57 巻 1 号 p. 234-241

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抄録

ポットで土耕栽培のイネを, 頴花分化期から小胞子初期までの期間(前歴期間)ファイトトロン自然光室(昼24/夜19℃)内で水温と水深を変えて栽培し, 小胞子初期に冷温処理(12℃3日間)を行って耐冷性を検定した. 小胞子初期のイネの耐冷性は前歴水管理によって大きく変動し, 水温25℃までは水温を高くするほど, 水深10cmまでは水深を深くするほど, 耐冷性が向上した. つぎにファイトトロン内のきびしい冷温条件(前歴期間の気温18℃, 水温21℃, および小胞子初期5日間の気温15℃, 水温18℃)の下で, 深水灌漑による冷害防止効果を実験した. 前歴期間10cmの深水灌漑を行うと小胞子初期の冷気温による減収が著しく軽減され, その効果は従来から唱導されてきた危険期20cmの深水灌漑のそれよりも大きかった. また前歴深水と危険期深水を組合せた場合の冷害防止効果は, 相加的ではなく相乗的であった. 以上の結果に基づき, 冷害防止のための新しい水管理法として, 頴花分化期から小胞子初期までの期間における10cmの深水灌漑を提唱した.

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