日本作物学会紀事
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発根能力からみた真作イネ科作物の湛水条件における生育反応の比較
河野 恭広山内 章野々山 利博巽 二郎
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1988 年 57 巻 2 号 p. 321-331

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抄録

9種の夏作イネ科作物を用い, 湛水と対照条件に対する生育反応を, 節根数と地上部・根部間の乾物分配に注目して, 幼植物期 (短期処理) と出穂期 (長期処理) の個体で比較した. アワを除く全ての作物の主稈からの節根数は, 処理により増加した. アワは短期処理で節根数を増加し, 長期処理で減少した. 長期処理に対する発根反応に基づき, 作物は次の群に分けえた. 1)全根数を減じた作物 (アワ), 2) 主稈からの発根数を増すが, 全根数をわずかに減じた作物 (キビ, トウジンビエ), 3) 全根数を増加した作物 (イネ, シコクビエ, ハトムギ, ヒエ, モロコシ, トウモロコシ). 第3群は分けつの有無によって, a) イネ・シコクビエ・ハトムギ・ヒエと, b) モロコシ・トウモロコシに分けえた. 長期処理で地上部/根重比は, 第2と第3-a群で減じ, 第1と第3-b群で増加した. 植物体重は第3-a群では減少程度が小さく, むしろ増加するものもあったが, 第2と第3-b群では減少した. 第1群では植物体重の減少は, 根への乾物分配の減少のみならず発根数の減少を伴なった. 全体として発根数の増減は, 根への乾物分配割合の増減を伴なった. 長期と短期処理における各作物の共通品種の発根反応を比較すると, 概して湛水期間の延長によって個体当たりでも, 主稈当たりでも節根数の増加割合が大きくなった. 唯一の例外はアワであった. このように, 湛水条件に対する発根反応は, 作物の発育段階のみならず湛水期間の長さによっても変化した.

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