抄録
明期において種々の光条件を経験したダイズ個体の, 連続暗黒下における呼吸速度から, 呼吸の経時変化が決定されるメカニズムを検討した. 暗期開始時における単位乾物重あたり呼吸速度(Respiration rate per unit dry weight, RPW)は, 直前の明期の光強度に影響されるが, 明期の長さとは関係なかった. 暗期開始後RPWは時間とともに低下し, その後上昇するが, 極小となった時のRPWは明期の長さによって異なり, 明期の長さが短いほど低い値を示した. 加えて, RPWが一時的に上昇した時の値は, 光強度および明期の長さの両方に影響され, 光強度と長さの積である積算光強度との間に直線的な関係があった. 窒素供給を停止した個体では, 前述のようなRPWに対する明期の長さの影響はまったくみられなかった. 以上より, 暗期における呼吸速度の経時変化は二つの相より成り, 一つは暗期開始直後に見られ, 明期の光強度の影響を受けること, 他の一つは, それ以降に見られ, 明期の積算光強度の影響を受けることがわかった. したがって, 呼吸速度は二つの異なる生理過程によって制御されていると結論された.