水稲32品種および陸稲19品種からなる日本型51品種ならびにインド型水稲25品種の計76品種のイネ(Oryza sativa L.)を水耕培養し, それらの25日苗における無機養分吸収能力, とりわけNH
4-N, NO
3-N, PおよびKの吸収速度(mg・dry wt g
-1・h
-1)における日本型(日本型水稲)とインド型(インド型水稲)との差および水稲(日本型)と陸稲(日本型)との差, ならびに養分要素間の関係について検討した. 結果の概要は以下のとおりである. 1) 日本型よりインド型のNH
4-NおよびP吸収速度が有意に速く, Kでは逆に日本型がインド型より有意に速く, NO
3-Nでは両生態種の吸収速度はほぼ同じであった. 2) 陸稲は水稲よりいずれの要素における吸収速度も遅く, 特にNO
3-NおよびKにおいて両生態型間の差は顕著であった. また吸収したN量(NH
4-NとNO
3-Nの和)に占めるNH
4-N量の割合であるNH
4-N依存率(%)が水稲より陸稲において大きかった. なお供試品種のすべてを込みにしたNH
4-N依存率は約70%であった. 3) 吸収速度はN>K>Pの順であり, この関係は生態種, 生態型に拘らず同じであった. 4) 生態種や生態型の相違によって形質間相関の様相が異なった. インド型では乾物重とK吸収速度との相関, ならびにNH
4-NおよびNO
3-N吸収速度とP吸収速度との相関がそれぞれ有意でかつ正であったが, 日本型ではそれらの相関は有意でなかった. 一方水稲では根数とNK
4-N吸収速度の相関が有意でかつ負であったが, 陸稲では有意でなかった. 5) 生態種や生態型に拘らず, NO
3-N吸収速度はKのそれと有意でかつ正の相関を示した. 6)以上の結果は, イネにおける無機代謝機能が生態種や生態型によって分化していることを示唆している.
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