日本作物学会紀事
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大豆の窒素追肥技術 : 第4報 土壤条件が追肥効果に及ぼす影響
中野 寛渡辺 巌桑原 真人田渕 公清
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1989 年 58 巻 3 号 p. 331-336

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抄録
土壌条件が大豆の窒素追肥による増収効果に及ぼす影響について検討した。とくに, 窒素追肥が作物体の窒素同化に及ぼす効果を解析するため, 根粒非着生大豆系統を対照に用い, 供試栽培品種の窒素同定量, 追肥窒素の吸収量や追肥窒素による窒素固定の減少量を推定した。堆肥投与によって土壌の肥沃度を高めた時, 窒素追肥による増収量や増収率は低下した。逆に, 土壌からの窒素供給量が減少するにしたがい, 窒素追肥による増収効果は逓増した。土壌の種類が異なる場合には, 無追肥条件下での作物体の土壌窒素吸収量, 窒素固定量や全窒素同化量の大小と, 追肥の増収効果には直接的な関係は認められなかった。しかし, 開花期から最大繁茂期までの同化窒素量を高める効果が大きい土壌条件の下では, 追肥による増収効果も大きかった。追肥効果が高かった原因は, 灰色低地土のシルト質埴壌土では, 無追肥時の窒素固定機能が低く, 追肥による窒素固定の低下が少なかったためであった。主た, 灰色低地土の壌土の中には, 追肥窒素が迅速に吸収され, 追肥窒素の利用率が極めて高かったものもあった。一方, 黒ボク土の壌土は, 窒素追肥による窒素固定の減少が著しく, 同等の土性の灰色低地土の壌土に比べでも追肥効果が上がらなかった。その著しい窒素固定阻害は, 黒ボク土の可給態燐酸の濃度が低いためであると推察された。
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