抄録
バレイショの近縁野生種 (野生種) が後代の育種材料の収量形質に及ぼす影響を明らかにするために, 異なる野生種に由来する36系統 (品種) を母本とし, 父本を共通とする交配から得た, 第1次栄養繁殖世代の集団間における塊茎収量 (生体重), 澱粉価及び澱粉収量を比較した。CP群 (S. chacoenseまたはS. phurejaに由来する系統) を親とした集団は, T群 (野生種に由来しない系統) およびDW群 (S. chacoenseまたはS. phureja以外の野生種に由来する系統) を親とした集団に比べ, 澱粉価及び澱粉収量の集団平均値が高く, また集団内の雑種個体間の変異が大きい傾向を示した。各集団の澱粉収量は塊茎収量, 澱粉価の両者と高い正の相関関係を示したが, 澱粉収量の高い集団間では, 澱粉収量の差異は主として澱粉価の差異に起因していた。各集団の雑種個体間では, 澱粉収量は塊茎収量ときわめて密接な相関関係を示したが, 集団間における澱粉価の変異は塊茎収量に対する澱粉収量の回帰直線の差異として現われた。以上のことから,CP群の系統を育種交配の親に用いることにより, 塊茎の澱粉価及び澱粉収量の高い品種を効率的に育成できることものと考えた。