抄録
日本型イネカルスからの植物体分化初期過程を, 走査型電子顕微鏡を用いて研究した。茎葉形成培地上で, カルス塊表面が経時的に変化したのち, 不定芽・不定根を生じた。はじめ, カルス塊表面を薄層がおおっていたが, ときに, その層が強く裂かれ, 薄層の下から露出した表層細胞に繊維状構造がつらなる。しかし, カルスの生育が進むと, 表皮状構造がカルス塊をおおい, より安定化した表面構造を示すようになる。更に塊状構造は肥大・生長し, 薄片状または筒状構造を呈するようになり, 最終的に幼芽を再生する。また幼芽から離れて, 根毛をもった不定根が発生する。従って本研究結果は, カルス表面の安定化が茎葉形成初期過程の一つの特徴であることを示した。