抄録
既報のように, 関東以南の地域におけるネピアグラス (Pennisetum purpureum) の品種メルケロンの植付け当年の乾物生産力は必ずしも南の地域ほど大きいという傾向は見られなかった。その理由を解明する一助として, 上記の結果を得た研究のデータを用いて, 地上部各部の乾物収量の経時的変化並びに地域差を検討した。経時的変化は東京と宮崎における調査結果により, また, 地域差は, 東京, 名古屋, 福岡, 宮崎, 那覇及び西表島の6カ所における調査結果により検討した。いずれも, 5月上, 中旬に7-10葉期の分げつを植付け, 10月下旬-11月下旬の各地域の年内生産終期までの期間にわたり, 比較的多肥の条件下で栽培し, 栽培中途の刈り取りを行なわない区 (1回刈り区) と8月上, 中旬に中間刈り取りを行なう区 (2回刈り区) とを設けた。葉身, 稈 (葉鞘を含む) 及び枯死部の乾物重増加速度はいずれも, 北の地域の方が6月下旬までは劣ったが, 7, 8月における速度は逆となった。他方, 9月以後の葉の枯死速度は北の地域の方が小さかった。このような生長の経過により, 1回刈り区の葉身収量は南の地域ほど小さく, 稈及び枯死部の収量は, 2回刈り区の1番草の各部の収量とともに, 生育日数及び気象条件の地域差に関連した地域差を示さなかった。しかし2番草の葉身及び稈の収量は南の地域ほど大きい傾向がみられた。葉身収量及び収量の稈/葉身比からみた生産態勢及び飼料としての品質は, 1番草を除き, 南の地域ほど劣り, また, 2番草に比べて1回刈り区の方が劣った。